このままでいいの? と悩むあなたへ——会社勤めを続けるか迷った時の考え方


■ 個人オーナー会社に勤めるメリット・デメリット

個人オーナー会社には、意思決定のスピードが速く、変化への対応が柔軟であるという利点があります。
特に小規模な企業であれば、社員一人ひとりの影響力が大きく、自分の提案が即座に採用されることも少なくありません。やりがいや手応えを感じやすい環境といえるでしょう。
しかしその反面、すべてがオーナーの考えひとつで決まってしまうという、強烈なトップダウンの弊害もあります。経営方針が不明確だったり、気分で人事が動いたり、社内のルールが一貫していない場合、社員は振り回されることになります。

このような会社に長く勤めるかどうかの判断材料として、一つ言えるのは、「オーナーの考えや行動は、基本的に変わらない」ということです。期待して待つよりも、自分がどうありたいか、何を大切にしたいかを軸に考えた方が、納得のいく人生を歩めます。


■ 判断材料として「家族を含めた月間キャッシュフロー」を見直す

感情だけで今の職場を辞めるかどうかを決めてしまうと、あとで後悔することになりかねません。
そこで一度立ち止まり、自分と家族の月間キャッシュフローを整理してみることをおすすめします。
現時点での収入と支出を洗い出し、最低限必要な生活費、子どもの教育費、将来への貯蓄などを確認することで、「転職しても生活に支障がないか」「副業でどれくらいの補填ができそうか」など、現実的な選択肢が見えてきます。
ライフプランを家族と共有し、今後数年のシナリオを立てておくことが、安心して次の一歩を踏み出す後押しになります。


■ 転職を「逃げ」ではなく「戦略」として捉える

転職=逃げ、という考え方をする人もいますが、実際にはそうではありません。
転職は、「自分の人生をより良くするための戦略的選択」であり、自分の価値観やスキル、キャリアの方向性に合った場所に移るのは、ごく自然な流れです。
むしろ、無理をして今の会社にしがみつくことの方が、長期的には大きなリスクとなる可能性もあります。


■ 自分の力を信じて、まずは小さく動いてみる

いまの会社がしんどくても、いきなり転職するのは勇気がいります。
そんなときは、まず副業や社外活動など、小さな一歩を踏み出してみるのが効果的です。外の世界に触れることで、自分の市場価値や適性が見えてきたり、思いがけない出会いがチャンスにつながったりすることがあります。
そして何より、自分の力で動いたという経験が、「自分は変われる」という自信に直結します。


Aさんは30代半ば、個人オーナーが経営する不動産会社で営業職として働いていました。入社当初はやりがいもあり、数字を上げれば評価もされていましたが、次第に社長の気分や好みによって評価が左右されるように。「今日は機嫌が悪いから」「自分のやり方が正しい」——合理性のない指示に疑問を感じながらも、家族の生活を考えて我慢を重ねていました。ある日、子どもに「パパ、なんで毎日つらそうなの?」と言われたことでハッとし、転職を決意。転職活動を始めて3ヶ月後、外資系の不動産関連企業に内定を獲得しました。現在は成果主義が徹底された環境で、実力に応じた報酬と明確なキャリアパスを得ています。「あの時の決断が、人生で一番のターニングポイントだった」と笑顔で語ります。


Bさんは40代の事務職女性。地方の老舗企業で総務経理を一手に引き受けていました。経営者は「社員は家族だ」と言いながら、私的な用事にも彼女を呼び出し、休日にも社長の家庭の都合で出勤させられることが多々ありました。仕事への誇りはあったものの、プライベートを犠牲にし続ける日々に疲弊。さらに親の介護も重なり、時間の自由が利く働き方を求めて転職活動を始めました。最終的に彼女が選んだのは、リモートワーク中心のクラウド会計サービス会社。これまでの経理経験が高く評価され、入社後は柔軟な勤務形態で仕事と家庭の両立に成功しています。「もっと早く動けばよかった。でも、今からでも遅くなかった」と語るBさん。今では月1回の旅行を楽しむほど、心にゆとりのある生活を送っています。


Cさんは個人経営の製造会社に長年勤務してきた技術職のベテラン。製造機器の設計から現場対応、さらには経理の補助や取引先との折衝まで、まさに「何でも屋」として頼られてきました。会社のことは好きでしたが、自分の専門性が評価されない環境に次第に不満を感じるように。社長に相談しても「君がいないと困るんだよ」の一言で終わり、何も変わらなかったと言います。そこで一念発起し、働きながら資格取得に挑戦。2年後に製造コンサルタントとして独立を果たしました。今では複数の中小企業と顧問契約を結び、専門家としての地位を確立しています。「会社のために尽くすのも悪くない。でも、今は自分の知識や経験が『価値』として認められる。それが本当に嬉しい」と語るCさん。60歳を目前にして、ようやく自分らしい働き方に出会えたそうです。


3人の共通点は、「このままでは自分が壊れてしまう」と感じながらも、何とかしようと小さく動き出したことです。
転職は簡単な決断ではありませんが、その一歩が大きな転機になることがあります。今の職場に不安や疑問を感じているなら、まずはキャッシュフローやスキルの棚卸しなど、できることから始めてみてください。
情報を集め、可能性を広げることが、未来の選択肢を増やします。あなたの人生は、あなた自身のもの。
今の場所が合わないと感じるなら、次のステージへ進むことも、立派な「前向きな選択」です。

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